新築したので実験しよう!

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Ua値Q値の不思議:同じ家なのに計算次第で、断熱等級4からHEAT20 G2までかわる???

追記: 下記、断熱が最優先ではない、Ua値もそこそこでも良いかも、コストが厳しい、と思った、我が家と同じような方には参考になるかもしれない話を書きました。

高断熱第一!の方向けには、レベルが少し低めの話です。


とにかく断熱やUa値を追及したい!断熱に最優先にコストをかけるべき!という方は、さらにその先の考え方を説明されている、栃木県のラファエル設計さんのブログを熟読されることをお薦めします。

ラファエル設計さんは、当然のように、G2などをクリアするような設計をされていますが、決してUa値やG2, G3を基準とするのではなく、さらにその先を考えた設計を実践されており、繰り返しブログで説明されています。

http://raphael-pd.com/posts/post_eco_e113.html

追記終わり


さて、我が家の話に戻ります。

最近、住宅の仕様を数字であらわすのに、Ua値やC値という数字がよく使われます。

Ua値が断熱に関する数字、C値が気密に関する数字ですね。


新居の中間検査時の気密は実測値の平均で

C値 0.35

で、玄関引戸や大きな引き違い窓があるにも関わらず、0.5を切る非常に良い値でした。

頑張ってくれた大工さん、電気屋さん、工務店さん、測定して下さった日本住環境さん、

https://www.njkk.co.jp/

色々教えていただき、日本住環境さんをご紹介いただいた福田温熱空調さん

https://fokk.jp/

に感謝です。


一方、断熱の程度を表すUa値や、以前多く使われていたQ値は、実測しないので、設計値です。

そして、このUa値が、計算方法で簡単に0.2変わることもあることは、あまり施主ブログなどでも触れられていないようなので、下記に書いてみました。


さて、我が家では、気密のC値は追及して、第一種熱効率換気までつけた一方で、壁断熱は追及しませんでした。

それは、都内で土地が狭いからです。断熱のために壁を厚くすると、同じ間取りでは、外壁周りの通路や階段が狭くなります。

それでも、第一種熱交換換気にして気密をとったのは、喘息気味の家族のため、温熱よりも、空気質の管理が最優先だったためです。

優先順位としては、その次に、窓や断熱材も、しっかり生活とコスパも考えながら選定したものの、それらの性能を平均して計算するUa値の追及は、当初、全く興味がありませんでした。


ただ、いざ我が家が建ちはじめてから、Ua値が最近盛んに宣伝されていることを知り、ふと気になって、調べてみると、まずは計算のルートによって大きくUa値が変わるのに驚きました。

0.01の桁の違いが宣伝されているのに、その計算方法で簡単に0.2変わったのですから。


このことは、住宅系youtuberの皆様がよく使うソフト、ホームズ君の会社でも解説されています。

https://jutaku.homeskun.com/legacy/syouene/analysis/comparison_ua_calculation.html


さて、うちのUa値を確認すると、設計時、確認申請時の書類は簡易計算で0.8をギリギリ切るくらい、そこそこの断熱性能で計算されてました。

ただ、実際に選定した部材(APW330など)を考

えると、壁以外の断熱はそれなりに頑張ったと思ったので、自分でykkapの外皮計算ソフトで計算し直してみたら、その実状が良くわかりました。


以下、色々な数字がでてきますが、全部、うちの新居、全く同じ建物の話です。


・簡易計算→0.8を切るくらい。色々入力値を変えても、あまり大きく数値が変わりません。

・詳細計算で窓は仕様値→0.6を切るくらい

・詳細計算で窓は代表値→0.5くらい


温暖地だから、断熱等級や低炭素住宅の認定をとるだけだったら簡易計算で充分なのですね。


福田温熱空調さんのような寒冷地では、詳細計算で審査官とのせめぎあいがあるので、大忙しのようです。

http://fok.sblo.jp/s/category/4428275-1.html

だけど、温暖地でも他の計算にも使ったり、工務店の宣伝に使うなら、詳細計算の方が良いですね。

(上記は、あくまで私がykkapのソフトで計算した数値で、また、熱橋などについては、ソフトで自動で出てくる規定の面積比などを利用して計算しており、詳細図面を追ったわけではありません。

そのため、福田温調空調さんのような専門家がしっかり計算すると、数値の前後はあるでしょうから、Ua値やQ値はすべて、くらい、と表記しています。)


上記の数値を今度は、Heat20の目安(Heat20の2017年報告会の資料や、より見やすいさとるパパさんのまとめを見ましょう。)と照らし合わせて見ていきます。


新居のUa値は、東京なので6地域の基準と比較すると、簡易計算で0.8くらいなら平成28年基準相当(0.87)で断熱等級4程度になり、詳細計算で0.5くらいとするとHEAT20 G1、まで上がることがわかりました。(G1: 0.56, G2: 0.46)


もし、断熱等級4ならいくら、HEAT20 G1ならいくら、という見積りをしたり、補助金の基準に影響するなら、この計算の違いが非常に重要になってしまうことがわかりますね。


ここからさらに、住宅の基準ではあまり使われなくなったQ値を計算すると、さらに不思議なことが起きます。

Ua値は外皮自体の断熱性能を評価するため外皮面積で割って求めますが、Q値は家の空間としての断熱性能を求めるため、床面積で割って求めます。


そのため、同じUa値の外皮では、同じ広さなら形状が正方形や円に近いほど、立方体や球に近くなるほど、同じ形なら、大きくなればなるほど、床面積あたりの外皮面積が少なくなるのでQ値が小さくなり、有利です。

(算数の問題で、体積あたりの表面積を計算するのとほぼ同じです。)


つまり、同じ性能(Ua値)の外皮でも家の形状や広さによって、外皮の室内空間への影響は大きく変わり、それを考慮したのがQ値です。


そのため、実際に住む個々の家の性能、自分の家の性能は、Q値の方がよく表す一方で、様々な家に使われる製品や会社の仕様を比較するには、Ua値の方が適切だったので、Ua値基準に変わったわけですね。


Ua値やそれを使った基準は、あくまでも、業界全体の底上げのための指標であり、施主としては、頼む会社や製品の選定には参考になる有用な数値である一方で、自分自身の家では、最優先に追及するための数値ではない、ということがわかります。


具体的には、例えば、同じUa値で同じ面積の部屋を、上に順に積み上げていくと、平屋より2階建、2階建より3階建が、階が上がるほどQ値、家を空間と見たときの断熱性能としては、有利になります。

外皮は屋根や地面に接していない階ほど少なくなるからです。

(あくまでも同じUa値ならです。階間の木材が原因で、充填断熱で階が増えると、Ua値が下がる場合があるそうです。また、家が大きくなると、空間も外皮も増えますから、家全体の光熱費は上がるでしょう。でも、床面積、空間あたりの断熱性能は上がります。)


一方、全ての階の床面積の合計を等しくして比較する場合は、合計の床面積をどのくらいに設定するか、どんな形状にするか、によって、何階立てが有利か、答えが色々変わります。

最も単純に考えると、最も良くなるのは立方体に近くなるときで、それが標準的な天井高さで何階建てになるか?は、広さによって変わる、ということです。


さて、我が家は、たまたま立方体に近い形なので、Q値はUa値よりやや有利になり、Ua値を0.5くらいとすると、外皮だけ(熱交換なし)で1.7くらい、あとほんの少しでHEAT20 G2の1.6に届くところまで迫ります。

さらに熱交換換気を計算に含めると、1.3くらい、今度は6地域のHEAT20 G2(1.6)を超え、4-5地域、南東北や北陸のHEAT20 G2(1.3)に近づきます。

こう考えると、そこそこ断熱のつもりだった我が家、意外と、高断熱な家なのかもしれません。


しかし、G3(6地域 1.07)には全然届きません。

色々計算しましたが、屋根の断熱は既に充分で、充填断熱のままもっと断熱材を厚くしても大きくは変わらず、G3にするには、我が家にはUa値より有利なQ値であっても、付加断熱や開口部のさらなる熱貫流率の低下が必要です。


このように、Heat20の基準値との比較が、Q値で判断すると、Ua値の結果とここまで変わるのは、Heat20のUa値が、あくまでもモデルに設定した標準的な広さ・形状の2階建て住宅に対して、熱交換換気なしの条件を基に、詳細計算で設定された数値だからです。


そのため、簡易計算や、モデルと大きく異なる住宅、熱交換換気を使用した場合、においては、元々の計算の前提が崩れてしまいます。


そして、これらの3つの条件が全て揃ってしまった我が家では、ここまでみたように、同じ家なのに、計算によって見かけ上、温暖地の断熱等級4程度から南東北や北陸のHEAT20 G2にせまるまでに、変わってしまったわけです。


計算は、もちろん、しないよりした方が絶対良いですが、上記のように、計算は前提条件や計算方法により、大きく結果が変わります。


そのため、別々の工務店やハウスメーカーの宣伝の計算値を比べるにしても、G1G2を気にするにしても、細かい桁(Ua値の0.01の位とか)まで見比べるのは、余り意味がないかもしれませんし、最後は、その家の設計ごとに、Ua値以外のことも、しっかり考えるべきです。

(補助金関連は、行政はシビアなので、0.01を気にするべきです。)


例えば、上記の計算では、平均なので、窓の性能(APW330)がUa値に大きく効いた一方で、我が家でこだわって断熱材を厚くしてもらった、下記の箇所の断熱はどれも、Ua値の変化へはあまり大きくは影響しませんでした。しかし、実際の体感や生活には大きく影響あると思います。


・福田温熱空調さんや工務店の設計士さんにご助言いただいて倍に厚くした、天井の断熱:

夏の3階の暑さに大きく影響するはず。

・自分の経験から厚くしてもらった、階下が外気に触れる箇所の床の断熱:

経験上、断熱が薄いと冬に床が冷えて寒い。

・玄関の土間の断熱:

冬、冷たいと、玄関が寒くなったり結露したりして嫌。


さて、以上のように、温熱の宣伝と計算に熱心なハウスメーカーや工務店ほど、詳細計算を使って高性能な数値を示すことができる一方で、温熱の計算や宣伝に興味の薄い(でも他の面で良いことがたくさんある)会社が簡易計算を使うと、我が家のように、全く同じ部材を使っても、大幅に劣った性能の家に見えてしまう、かなりアンバランスな状況になっています。


現状、このような仕組みになってしまっているうえ、YoutubeなどでもUa値がさかんに喧伝されている以上、あまり温熱の宣伝に熱心でない、あるいは不慣れな、工務店や設計事務所も、簡易計算は使わないよう、早急に詳細計算に移行された方が良いのかもしれません。


(ただし、逆のケースで、例えば今回の私のように規定の面積比などを使用した結果、詳細計算で、実際の設計よりも良い数値を示してしまっている場合もあるそうですので、なかなか難しいです。)


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