エアコン1台の3階建て全館暖房の実測とUa値・Q値の関係
先日に引き続き、新居の壁掛けエアコン1台での「3階建て全館暖房」を調整し、ほぼ完了しました(^○^)
今回は、エアコン一台での「三階建て全館暖房」のまとめとして、実測して理解したことほぼすべて書きました。以下の順番で説明します(^○^)
⭐新居の壁掛けエアコン1台での「3階建て全館暖房」の概略
⭐最近の7日間の室温のグラフとエアコンの電気代(風量と風向の手動設定の追い込みの結果)
⭐実測のエアコン暖房代と温度と「Q値」「Ua値」の関係
⭐期間全体の暖房費用の予測計算と「Q値」「Ua値」の効果の見積り
⭐エアコンの自動設定がうまくいかない理由と手動設定の考え方
⭐エアコンの具体的な手動設定
⭐解説: エアコンの室温表示の実際の室温からの解離と風量・風向の設定
では、一つ目から。
⭐新居の壁掛けエアコン1台での「3階建て全館暖房」の概略
エアコンの手動設定を、さらに条件を追い込んで、先日の設定からは、少し変えました。
20℃目標で22~23℃設定くらい。それでも実際の全館の目標平均室温よりも、2~3℃上に設定する必要はあります(^o^ゞ
こちらが、外気と、1, 2, 3階の室温のグラフです。
3階建てなので、どうしても1~3階で3℃の幅は生じてしまいますが、でも、かなりくろーばーさんやクロセさんに教えていただいた温度帯に近づきました(^○^)
確かに快適ですね!!!
雨で湿度が上がった際に結露は起きたもののエアコンのせいでもないし、やっと、家族の誰からも不満が出なくなったので、これでしばらく、ほとんどエアコンの設定をさわらなくても、快適に過ごせることを期待しています(^o^ゞ
とりあえずこれで、1階の壁掛けエアコン1台で「3階建て全館暖房」を続けられるようになりました。
エアコン1台でいけるかどうかの考え方は、鳳建設の森さんの、↓の解説がわかりやすいかと思います。
今回、実測したエアコン代や室温・外気温と、この森さんの記事でも紹介されている式から、さらに少し複雑に変形した式を使って、気象庁の過去のデータから、エアコン1台で全館暖房をした場合の↓こんなグラフを描ける程度まで、しっかりデータ取りができました(#^o^#)
UA値やQ値だけからの暖房費の見積もりよりもずっと良かったため、冬の暖房代に安心しました(^^♪
このグラフ、我が家と同様の条件での計算については概ね正しい計算のグラフですが、我が家の暖房費が安くなった原因である、「熱交換や内部発熱・日射取得」の実際のバランスについては、少しこのグラフからズレているかもしれません。それも下記で説明します。
(後日追記:地域補正値の線は、Heat20公式サイトの記載にも基づき記入したものですが、更新漏れの古い記載だった模様です_(._.)_)
一方、夏には日射取得や内部発熱は不利に働くため、夏になったら今度は、3階の壁掛けエアコン1台で「3階建て全館冷房」を試してから、再度、計算し直すつもりです。
でも、うん、少なくとも、三階建てをエアコン1台で暖房、ちゃんとできてますよ、設計士さん(*^o^*)
しっかり、気密・断熱が取れているおかげと、はっきりわかりました(^○^)
大工さん、本当にどうもありがとう!!!
では、2階のエアコンは必要なかったか?
計画時に私が迷ったとき、工務店の方もおっしゃっていましたが、もし使わなくても、各階1台はあった方が無難、というのが使ってみた感想です。
下記に詳しく説明しますが、エアコン1台で、というのは実際の外気温に合わせた設定の追い込みが必要になりますし、同じ家族でも、人や時期によって、使い方や要望は変わるでしょうから(^o^ゞ
また、この結果は、壁断熱は高断熱としては薄めでダクトや特殊工法の設備も全くない点では普通な家、でも、窓の断熱も良くして、しっかり気密施工して、気積あたりの外皮の面積は小さい、立方体に近い形で、かつ、2つの吹き抜けと通気孔により、1階~3階までの全館の空気の循環もしており、熱交換換気も自動制御し、他の全ての換気扇も対策済みの、恐らく三階建てとしては現状、普通ではない工夫をたくさんした、室温の均一化に有利な住宅の話、ということにもご注意ください_(._.)_
⭐最近の7日間の室温のグラフとエアコンの電気代
(風量と風向の手動設定の追い込みの結果)
こちらが、先ほどのグラフに、ついでに浴室からの排気の出る脱衣室を足したグラフです。
外気温と全館、全く違いますね。外気温をはずして、拡大します。
浴室からの換気の排気を受ける(←おかしいことしてます)脱衣室は、どうしても少し下がりますが、18℃以上です。
一方、床下も屋根もないため一番外皮の影響が少ない2階リビングは、常に一番、気温が高くなっています。
では、湿度は?相対湿度ですので、気温の影響はありますが、そのままで。
屋外で100%超えているのは雨の日ですが、その後もnetatmoが雨か結露でぬれていたかもしれません。
概ね、40~60%以内に保てていますね。下記に書いたように加湿器は全く使っていません。
浴室排気は、入浴すると風呂のフタを開けたり、シャワーを浴びるので一気に湿度が上がり、その後12時間以上かけて乾燥していきます。また、1階の室内で物干しもしています。
さて、エアコンのみの電気代は、26円/kWh換算で
1日目 1/21: ¥212(晴れ -0.6~10.6℃)
2日目 1/22: ¥155(晴れ 1.4~15.9℃)
3日目 1/23: ¥106(曇り後雨 2.7~9.5℃)
4日目 1/24: ¥200(雨後曇り 2.2~6.6℃)
5日目 1:/25: ¥110(晴れ後曇り 3.6~12.4℃)
6日目 1:/26: ¥112(晴れ後曇り 2.7~12.2℃)
7日目 1:/27: ¥97(曇りときどき雨 7.1~16.2℃)
(他に、2, 3階のエアコンのみまもりのための電気代: 各5円、計10円がかかっています。)
概ね、1日100円~200円程度の暖房費ですね(*^▽^*)
では、それまでの使い方の、部分間欠暖房と比較すると?
たまたまエアコン代を記録していた、3台バラバラで間欠運転で使っていときの同じ1月の様子。3台計なので、-10円して上と、似た日と比較すると、
1日目: 1/2 ¥112 (晴れ -0.1~9.6)差額¥100
3日目: 1/17 ¥60 (曇り 4.1~9.2℃)差額¥46
4日目: 1/8 ¥145 (晴れのち曇り -1.5~6.5)差額¥55
5~6日目: 12/28 ¥11 (晴れ 5.5~12.9℃)差額¥99~101
ただし、12/28は日射がありほぼ無暖房でリビング20℃以上になった日なので、曇りの5~6日目と比べるのはやや不適切。
やはり、差額は1日平均¥75で、最大でも100円程度ですが、部分間欠暖房の方が安かったです。
しかし、これらの日の室温のグラフも同じ様に並べると、かなり様子は違います(^o^;)
それぞれの日や時間で、運転していたエアコンが異なるので、暖かい順番がコロコロ入れ替わっていますね(^ ^)
やはり暖房している部屋以外の床は冷たかったです。
ここまで室温が毎日コロコロ上下していたし、妻はともかく、結局、子どもたちはコタツを欲しがりました。
↓のような、こたつやホットカーペットの電気代も考えると、さらにここから電気代がかかるのは同じです。
下記、電力会社の比較サイト・エネチェンジの記事ですが、それぞれの暖房器具の電気代が載っています。コタツは意外と安いのですが、新居で使うと悔しいので(>_<)
また、この時間ごとに暖房をかける部屋を変える方法は、家族みんなが同じ部屋にいる前提の暖房費です。子供達が成長し、それぞれが違う部屋にいると、個別暖房では、ここから暖房費が跳ね上がるわけです。
そうすると、日中に家で過ごす人数や時間が多い、我が家の場合、電気代を考えても、健康や過ごしやすさを考えると「壁掛けエアコン1台での三階建ての全館暖房」の方が良い、ということかもしれません。
なぜエアコン1台の全館暖房を皆さんが薦めるのか、がよく理解できました。
それにしても、このエアコンの部分間欠運転でも、暖房をかけてない部屋もほぼ15℃は下回っていないですね(*^.^*) (浴室排気は、気化熱で熱が奪われているで不利な比較です。)
下記、屋外の外気温を加えたグラフです。
Heat20 G1, G2の目指す「間欠暖房中、非暖房室の室温が15℃を下回らない」が問題なくできていることがわかります(*^▽^*)
もちろん、地域によっては日中に氷点下がつづきますが、我が家はそういう地域にありません。我が家はUa値を計算すると、G1相当ですが、それでもHeat20の詳細な地域補正までかけると、「しっかり設計施工されていれば」問題ない地域です(もちろんG3やパッシブハウスよりだいぶレベルの低い話。)詳細は、下記の記事の最後の方で解説しました。
(後日追記:↑地域補正値の話は、Heat20公式サイトの記載にも基づき記したものですが、参考にしたのが更新漏れの古い記載だった模様です_(._.)_)
⭐実測のエアコン暖房代と温度と「Q値」「Ua値」の関係
我が家のQ値は、熱交換換気の実際の効き次第で、1.7~1.3あたり。私が自分で計算した値は、外皮だけでQ値1.7, UA値0.51ですが、これはあくまでも、設計値です。「Q値」や「Ua値」が測定されることは、一般の住宅では、通常ありません。
しかし、今回、一台のエアコンで全館暖房してデータが取れましたので、実際の我が家のこれらの断熱パラメーターの実効値を、実測データから求めることが原理的には可能です。というか、本来は難しい計算だけど、1台のエアコンの設定と全館の室温の「両方が安定」している今なら、できそうです(^○^)
半分お遊びで、我が家で施工された断熱が、実際はどの程度になったのか?
上のデータから概算してみましょう(^0_0^)
なぜそんなことができるか?
1台のエアコンの全館暖房をヒーターに置き換えて、我が家を一つの箱とみなすと、ちょうど、試験所で様々な製品の熱貫流率を測定している方法、
「熱箱法」と似た状況になるからです。ただし、現実ではドアの開け閉めや生活があった上です。
またまた、鳳建設の森さんのページで紹介されている、高気密高断熱住宅のエアコン電気代の計算方法。から、今度は下記の式を見てみましょう。
「電気代(円)= 家の性能(Q値)×家の床面積(㎡)×地域のデグリーアワー(℃h)÷エアコンの性能(COP)÷1000(Wh→kWh)×電気料金(円/kWh)」
設計値であるQ値から暖房費を予測する式ですが、この式は、「熱箱法」で熱貫流率を測定した時の逆の式になっています。
ここでは、再度、元の式に戻して、現在の、換気調整を終えた我が家の実効的なQ値、UA値を概算するのに使ってみましょう。
ここでは仮に、それぞれ実効的なQ値をQeff、UA値をUAeffと呼んでみます。
「家の性能(Qeff)= 電気代(円)÷ 電気料金(円/kWh)×1000(kWh→Wh)×エアコンの性能(COP)÷ 実測のデグリーアワー(℃h)÷ 家の床面積(㎡)」
この式のうち、QeffとCOP以外は、実測値から求めることができます。
また、最後の床面積の代わりに、外皮面積で割れば、実効的なUa値となります。
我が家の外皮面積は、348 ㎡です。ただし、この値には、本来UA値にいれないはずの換気損失も、ドアや窓の開け閉め、人の出入りなどが入り、定義が大きく異なってしまいます。これをここでは、仮にUAeffとおきます。
そこで、一般的な間取りのQ値からUA値への換算式でも検証します。
100~160平米未満 [換算Q値] = 2.5409 × [基準UA値] + 0.4345
こちらの式の逆算、
[換算UA値] = ([換算Q値]ー 0.4345)/2.5409
の式で求めた換算UA値を、ここではUAconと仮において求めます。
計算に用いた値:
・我が家の床面積は、Q値の計算は吹き抜けも入れるので実際の床より大きく 148 m2です。
・この7日間のエアコンの稼働状況(電気代)の実測値は、7日間計で、997円。
・エアコン代は電気料金 26(円/kWh)で算出した値。
・7日間の外気温と室内温度の実測値(1~3階の平均値)の温度差から、この7日間のデグリーアワー(その期間の各時間の屋内と屋外の温度差を全て足した値。ないしは時間と温度差の積分。)
・COPは、カタログに2019年モデルからはAPF6.9しか書いてないので、1つ前の同じAPFの2018年モデルのCOP、5.15を採用します。
すると、COP以外は実測値を使って、次のように我が家の実効的なQ値とUA値および換算UA値を求められます。
7日間でトータルで、2448デグリーアワー。1日毎では、下記、[ ]内がデグリーアワーです。
1日目 1/21: Qeff = 0.70 UAeff = 0.30 UAcon = 0.11
[403](晴れ -0.6~10.6℃ 212円)
2日目 1/22: Qeff = 0.62 UAeff = 0.26 UAcon = 0.07
[333](晴れ 1.4~15.9℃ 155円)
3日目 1/23: Qeff = 0.39 UAeff = 0.17 UAcon = -0.02
[359](曇り後雨 2.7~9.5℃ 106円)
4日目 1/24: Qeff = 0.69 UAeff = 0.29 UAcon = 0.10
[386](雨 2.2~6.6℃ 200円)
5日目 1:/25: Qeff = 0.45 UAeff = 0.19 UAcon = 0.01
[329](晴れ 3.6~12.4℃ 110円)
6日目 1:/26: Qeff = 0.47 UAeff = 0.20 UAcon = 0.01
[321](晴れ後曇り 2.7~12.2℃ 112円)
7日目 1:/27: Qeff = 0.50 UAeff = 0.21 UAcon = 0.03
[316](曇りときどき雨 7.1~16.2℃ 97円)
最も良い値 Qeff = 0.39 UAeff = 0.17 UAcon = 0.02(日射取得少ない、暗い日)
最も悪い値 Qeff = 0.70 UAeff = 0.30 UAcon = 0.11(日射取得あり、晴れの日や、日射取得ない、雨の日)
平均値 Qeff = 0.56 UAeff = 0.24 UAcon = 0.05
私が計算した設計値のQ値は1.7~1.3, UA値0.51でした。
それよりずいぶんとあり得ない値までに良くなった理由はいくつか考えられますが、例えば、この計算に、内部発熱も日射取得も入っていないのが主な原因でしょう。
「家の性能(Q値)= {エアコン電気代(円)÷ 電気料金(円/kWh)× エアコンの性能(COP)+内部発熱(kW)× 時間(h)+ 日射取得(kW)× 時間(h)}× 1000(kWh→Wh)÷ 実測のデグリーアワー(℃h)÷ 家の床面積(㎡)」
とすべきでしたね_(._.)_
エアコン以外の熱が入ってない分だけ、断熱性能があり得ないほどに良く見積もられてしまった、ということです。
試しに、Q値が1.3になるように「内部発熱(kWh)+日射取得(kWh)」を調整すると、常に毎時1.2~2.0 kW(毎時30円~50円の電気代の暖房機器)、常に平均1.6 kW(毎時40円の電気代の暖房機器)、電気ストーブ数台分の、かなりの内部発熱や日射取得がいつもある計算になりましたΣ(・□・;)
熱交換換気を無視したQ値1.7だと、もっとですね。平均2.4 kWです。
確かに、上ででてきたほぼ無暖房の日、12/28 ¥11 (晴れ 5.5~12.9℃)日も、ムラがあるとはいえ、全館で16.9-21.9℃でしたので、妥当といえば、妥当ですね(^o^)ゞ
意外だったのが Qeff や UAeff と、デグリーアワーや晴れ曇りとあまり相関が無かったことです。断熱がよいからもあるでしょうが、日射取得の利得と同様に内部発熱の効果も大きいのでしょう。日中に子供達が走り回っている効果でしょうか(^o^)ゞ
内部発熱の要因として、例えば、↓これも大きく効いているかもしれません。
確かにオーブルデザインさんのブログ
では、冬のお風呂の熱回収の計算もされていましたので、それに近いことを試した我が家もそうなるわけですね(^^)ゞ
(もちろん、お風呂のガス代などの光熱費は普通に色々かかっています。それも暖房に効く、という計算です。)
温度が下がるマイナス要因として、外気温以外にも、普段の生活でのドアや窓の開け閉め、レンジフードやトイレの換気による外気の流入さえも、かなりキャンセルされていますね。
例えば、↓たとえば、この日、雪の日の1時間ずっと、子供達にいくつも窓を開けられた日の値は、1日目や4日目とほぼ同じ値、
1/28 Qeff = 0.68 UAeff = 0.29 [382] UAcon = 0.10 (曇りのち雪のち雨 -0.6~10.6℃ 198円)
です(*^▽^*)ゞ
今は無理ですが、もし夏と冬にそれぞれ、家族みんなで何日間も旅行できたら、旅行中に測定できると、ドアや窓の開け閉めなく、内部発熱も少ない、気密と断熱の取れた本来の家の性能を測定できますね。
その際は、熱交換の有無の影響も、スイッチボットの遠隔操作で実験することができます。
上記はあくまでも、色々な要素が含まれた結果としての実測値からの概算の話です。
一方で、我が家の生活の全ての要因が含まれているからこそ、この実測データを用いた、次のような金額の見積りが、我が家にとって、最も信頼できる計算になります。
⭐期間全体の暖房費用の予測計算と「Q値」「Ua値」の効果の見積り
さて、上記の計算から、我が家は、現在の生活様式の損失も含めた実測から当初は
Qeff = 0.56 UAeff = 0.24 UAcon = 0.05
と概算しましたが、実際には、設計値通り、Q値1.3として、内部発熱や日射取得が平均1.6 kW、常にある、と概算した方が妥当である、という結論になりました。
あるいは、熱交換の寄与を外した設計値のQ値1.7とすると、平均2.4 kWです。
ではここからまた、暖房費を逆算してみます(^o^)ゞ
先ほどの鳳建設の森さんのページで紹介されていた式を見てみましょう。
「電気代(円)= 家の性能(Q値)×家の床面積(㎡)×地域のデグリーアワー(℃h)÷エアコンの性能(COP)÷1000(Wh→kWh)×電気料金(円/kWh)」
まず、これを内部発熱や日射を含めた、
「電気代(円)= {家の性能(Q値)× 家の床面積(㎡)×地域のデグリーアワー(℃h)÷1000(Wh→kWh)ー内部発熱(kW)× 時間(h)ー 日射取得(kW)× 時間(h)} ÷ エアコンの性能(COP)×電気料金(円/kWh)」
の形に変更します。
さて、このうち、地域のデグリーアワーは、東京都心の値を、目標温度をいくつか変えて、過去の気象データから計算してみました。
デグリーアワーの基準値は検索すると、↓のHEAT20での岩前先生の資料などがでてきますが、
http://www.heat20.jp/data/2015/2015_4_iwamae.pdf
ここでは近似などを入れずに、日本の気温の一次資料である、気象庁による実際の気象データ
から、近年ではもっとも最低気温の低かった2017年~2018年の冬の10分ごとの実際の気温データから計算してみます。
冬の目標温度:18℃、20℃、22℃、25℃
暖房期:最低気温15℃以下として:10月5日~4月22日
とかなり広めに計算します。
と言ってみたものも、実際に気象データから抜き出す作業が大変でした。
同様に夏についても、もっとも最高気温の高かった2018年の夏
夏の目標温度:30℃、28℃、26℃、25℃
冷房期:最高気温30℃以上として:6月25日~10月7日
で計算するつもりでしたが、疲れたのでまた今度にします。。。
下記、あくまでも東京都心のデータですが、まとめておきます。この表のデグリーアワーは、東京都心部なら、どんな家でもどんなUA値、Q値でも計算に使えるデータです。
目標温度 | 18℃ | 20℃ | 22℃ | 25℃ |
---|---|---|---|---|
10月 | 1708 | 2732.3 | 3876.3 | 5725.6 |
11月 | 4415.5 | 5800.8 | 7230.3 | 9388.8 |
12月 | 8431.1 | 9917.1 | 11403.1 | 13632.1 |
1月 | 9932.7 | 11420.0 | 12907.3 | 15138.3 |
2月 | 8504.3 | 9848.3 | 11192.3 | 13208.3 |
3月 | 5007.5 | 6404.5 | 7860.0 | 10086.5 |
4月 | 1407.7 | 2201.3 | 3117.5 | 4607.3 |
通期全体 | 39406.9 | 48324.4 | 57586.9 | 71786.9 |
【表:東京都心部のデグリーアワー(℃・h)2017-2018冬10月5日~4月22日の気象庁実測気象データの気温から計算】
これに、我が家の実効Q値とUA値、
ケース1)Q値1.3と内部発熱や日射取得の平均1.6 kW、あるいは、
ケース2)Q値1.7として、平均2.4 kWを、それぞれに当てはめていきます。
ただし、下記のように、内部発熱や日射取得を計算する場合には、実際には10月や4月などの内部発熱が超過する日がある時期があり、上の表の月ごとではなく日ごとのデグリーアワーで計算しないとうまく処理できませんでした。
ケース1)Q値1.3と内部発熱や日射取得の平均1.6 kW
目標温度 | 18℃ | 20℃ | 22℃ | 25℃ |
---|---|---|---|---|
10月 | 0 | 15 | 138 | 997 |
11月 | 222 | 641 | 1511 | 3304 |
12月 | 2183 | 3623 | 5067 | 7232 |
1月 | 3638 | 5083 | 6528 | 8695 |
2月 | 2832 | 4138 | 5443 | 7402 |
3月 | 531 | 1106 | 1973 | 3829 |
4月 | 0 | 0 | 91 | 653 |
通期全体 | 9406 | 14607 | 20750 | 32111 |
35年計 | 329215 | 511234 | 726255 | 1123884 |
【表:我が家の暖房費の試算(円)】
最近数年の気象データで一番寒かった2018/1/25、最高気温4.0℃、最低気温-4.0℃の日と同じ天候の1日で、18℃目標 229円、20℃目標 275円、22℃目標 322円、25℃目標 392円かかる計算です。
ケース2)Q値1.7と内部発熱や日射取得の平均2.4 kW
目標温度 | 18℃ | 20℃ | 22℃ | 25℃ |
---|---|---|---|---|
10月 | 0 | 0 | 44 | 685 |
11月 | 115 | 473 | 1220 | 3280 |
12月 | 1813 | 3582 | 5470 | 8301 |
1月 | 3603 | 5491 | 7380 | 10214 |
2月 | 2715 | 4367 | 6074 | 8635 |
3月 | 396 | 971 | 1842 | 3950 |
4月 | 0 | 0 | 16 | 474 |
通期全体 | 8641 | 14884 | 22046 | 35539 |
35年計 | 302449 | 520954 | 771610 | 1243851 |
【表:我が家の暖房費の試算(円)】
一番寒かった2018/1/25、最高気温4.0℃、最低気温-4.0℃の日と同じ天候の1日で、18℃目標 262円、20℃目標 323円、22℃目標 384円、25℃目標 475円かかる計算です。
最大の電気代はこちらの方がかかりますが、トータルでは大きくは違いません。
実際の電気代と実測の温度からQ値と内部発熱や日射取得を合わせこんだせいか、どちらのケースでもあまり変わりませんね( ^o^ ) エアコン代だけをいつも記録できてはいないのですが、エアコン代と温度の実感として、だいたい合っている感じです。
となると、25℃にするために、あと120万円程度の費用を何かに使っても、エアコンがいらなくなるわけでもないので、この新居の仕様は、計画時UA値も計算せずに進め、ちょっとトリッキーと思っていましたが、意外とバランスがとれていたようですね(#^.^#)
ご参考に、ケース1の場合に、Q値やUA値を変えると、どのくらい暖房費が変わるかグラフを作りますね。こちらも近年では最低気温が一番低かった2017-2018冬の気象庁実測の気温から計算したものです。
(後日追記:地域補正値の線は、Heat20公式サイトの記載にも基づき記入したものですが、更新漏れの古い記載だった模様です_(._.)_)
まずQ値。熱交換の電気代は含めていません。測定できていないのと、そもそも、暖房に関係なく1年中使う方式ですし、このために導入した設備ではありませんので。
次にUA値。新居の実際のエアコン代と温度を入れ込むため、熱交換も無理矢理、換算の中にいれました(^.^;)
もちろん、上述のように、これらの値よりも、もう少し悪いUA値・Q値と、もう少し大きい内部発熱と日射取得のバランスになっている可能性もあります。
もっと別の条件で測定してみないとわからないので、ご参考程度にご覧ください。
このグラフからは、ここから頑張ってなにかしても暖房費用は35年で100万円も減らないことがわかります。(夏はまだどうなるかわかりません。。。また、日射取得が失われたらわかりません。。。。。)
まず冬の日射取得をしっかりとったうえで、さらに電気代を考えて追加投資するなら、我が家のように近隣に高層マンションが多くある立地でなければ、太陽光発電設備はお薦めです。(^o^ゞ
(本心は、いずれ我が家も載せたいのですけどね!!!)
どなたか、天空率を使ってビルやマンションを建てた場合の、近隣の建物の太陽光発電収支や日射取得への経済的影響をどうするか、研究や提言している方いないかな?
もし太陽光発電設備をずっとつけなくても、上記の発熱のうち、日射取得の割合が高いと、もし日射取得がとれなくなると暖房代がかかることになります。
まあ、今は大丈夫だけどいずれ、と考え、最悪でも空が見えればよいと諦めれば許容できる、そういうように我が家は設計していただきましたけれども、普通はそうではないと思うし。
「高気密」で「エアコン1台」の「全館」暖房・冷房の連続運転なら、このような計算が、比較的簡単にできますね(^○^)
(逆に、「」のどれかの条件がはずれると、計算がもっと難しくなりますのでシミュレーションした方が良いですね(^_^;))
⭐エアコンの自動設定がうまくいかない理由と手動設定の考え方
住み始めてから、3, 4か月ですが、12月に寒くなってきてからは、エアコンの自動設定を、順番に色々試してみては、撃沈していました。エアコンに完全におまかせ(毎日快適モード)しても、基本を自動設定の範囲内で、妻や家族に温度設定を任せても、必ず誰かが文句を言ってエアコンを消したりつけたり、設定温度を変える状況でした。
恐らく、基本的に、広いリビングで部屋中や人に風を届けたい、という発想で自動モードが設計されているのでしょう。その場合は自動がうまく働きそうな挙動です。
我が家でも、2階エアコンをリビングだけで運用する分には、自動設定でなにも問題ありません。
また、毎日快適モードも、説明書にも「季節の移り変わり」や「自分で設定できない方」のため、と書いてありますので、万能でないのも当然です。
一方、我が家の現在の状況・要望をまとめてみると、
・1階エアコンの設置場所がリビングではなく寝室
・エアコンの風は、人に当てたいわけではない。むしろ人に当てたくない。(当たると嫌がる人が家族の大半)
⇒できるだけ天井近くに風を。
・1階の他の部屋も床まで暖めたい。
・2階3階も暖めたい。
⇒できるだけ遠くまで風を。
これはもちろん、メーカーが自動設定で想定している状況と全く違うでしょうね(^_^;)
そこで、この2つの条件に対して、我が家に設置したエアコンを、正面3mくらいで風が届くか確かめながら、手動設定で最適化しました。
ちなみに最適化中の設定がまだうまく行ってない時に、子供に「寒い」と言われたので、「フルパワー運転モード」も試してみたら、50円/1時間、一気にかかって焦りました。それでも近場しか暖まらず。。。
このモードは我が家では、封印します(^_^;)
⭐エアコンの具体的な手動設定
ノクリア Xシリーズ 2019年モデル 4kW
as-x40j2の場合です。
これが一番遠くに風が届く風向です。
これより風向を上にすると、風をエアコンの近くの天井にぶつけるため、室温より先にエアコンのセンサー温度が急上昇して、エアコンがすぐに止まりました。
下にすると、体に風が当たる人が増えます。
左右はワイドモードより中央の方が正面遠くには風が届きます。
風量はとりあえず自動に。
ノクリアXシリーズはサイドファンがあります。
こちらは一番上が真正面に風が吹きました。
左右はワイドモードより中央の方が正面遠くには風が届きます。
自然風モードは、風音はかなりするのですが、波のような音で、無音を求めるわけでなければ、むしろリラクゼーションBGMと思うことにすれば、寝るには私や私の家族は気にならないです。
(個人差が絶対あります。むしろリビングでテレビや音楽を楽しむには邪魔と思います。)
エアコンの風を天井に流していますが、2階リビングですし、ちゃんと1階の床の冷たさもなくなったので、床暖房や床下エアコンが欲しくはなりそうにないです。
⭐解説: エアコンの室温表示の実際の室温からの解離と風量・風向の設定
今回も、先日と同様、目標とする室温は全階20℃前後で、エアコンの設定温度はそれより高い、22~23℃です。
しかし、先日の風向設定(風向が一番上)では設定温度25℃、エアコンの温風がエアコン周囲十数cmに滞留していたので、他の温度計の室温表示はほとんど変わらないのに、エアコン本体のセンサーの室温表示のみ、どんどん上がってしまいました(+_+)
今回、風量と風向を追い込んで設定したのは、メーカーの設計者の想定と異なる環境や使い方で手動設定すると、どうしてもこのように、エアコン周囲の温度(エアコンのセンサーの感知する室温)が実際の室温から解離してしまうことがあるためもあります。
温度調整の基本からは、この解離があっても、全階の室温を安定させること自体は問題ありません。その環境ごとに適切な設定温度を探せば良いだけです。そして、その環境の温度が毎日同じなら、毎日同じ設定で問題ありません。
しかし、外気温は毎日変わりますので、実際の室温とエアコンのセンサー温度との解離が大きければ大きいほど、毎日、外気温に合わせて設定温度も大きく変更しながら、勘や経験で、合わせ込む必要がでてきます。
(この勘や経験、合わせ込みの部分が、本来、自動設定のソフトウェアで理論式や経験式で制御されている部分で、今後の社会でAIに特に期待されている部分です。)
そして、この合わせ込みは、元々の解離が小さければ小さいほど、楽になります。
つまり、事前にハードウェアとして、実際のセンサーの配置や温風の流れを工夫して、この解離をなくせばなくすほど、毎日手動で設定温度を変えないで済み、勝手にエアコン内のソフトウェアが快適な温度に調整してくれるようになるわけです(^○^)
(同じ仕組みは、もちろん、家庭用エアコンだけでなく、ほとんどあらゆる産業で使われています。そのため今後、身の回りにAIが溢れていくでしょう。)
この解離を防ぐために、この機種、ノクリアXには、リモコンにも温度センサーがついています。
しかし、少なくとも2019年モデルでは、暖房や冷房の効きすぎを防ぐためにしか使用できませんので、先日や今回のように暖房でエアコン本体の温度センサーの温度が室温よりも上昇してしまうケースでは、機能しません。
先日や今回は、このケースですので、手動設定が必要になります。
このように、手動設定で実際の室温とエアコンの室温表示の解離を小さくできればできるほど、毎日のエアコンの設定温度の変更の手間がなくなっていくはずです。
この解離をできるだけ小さくするため、今回、エアコン本体の温度センサーに温風が当たらないように気をつけながら、風量と風向を調整しました。
↓テーマ毎のブログ記事のまとめも参考になりますね♪